ボーガン(クロスボウ)規制の是非について
兵庫県宝塚市のボーガンを使った殺人事件を受けた新たな法規制が議論されている。
しかし、殺人事件の道具として使われることを危惧しての洋弓類の規制は無意味であると考える。
理由はおおむね4個ある。
① 弓道・アーチェリーも同様の規制に服することになること
法律の規定の仕方の難しさゆえに、洋弓だけを弓道・アーチェリーと区別して所持を規制することは困難であろう。
② 構造が単純過ぎて容易に作れること
紀元前から武器として用いられてきた弓矢は構造が単純すぎて、ネットで調べれば誰でも作ることが可能で、入手や所持を規制しても、弓矢で人を殺そうという強い意思さえあれば、洋弓の準備は容易である。
③ 2人以上殺す覚悟があるなら違法に拳銃を適法に猟銃を入手する方法もあること
2人以上殺せば、死刑か無期しかないため、そのような覚悟がある人間ならば拳銃を違法に入手することも可能である。
また、精神的に異常があることを隠して猟銃の免許をとることも考えられる。散弾銃は自動式で弾層も含めて3発までの装弾しか認められていないが、大量殺人をしたければ、マガジンを改造して装弾数を増やした12ゲージの自動式散弾銃でバックショットをばらまければ効率的に大勢の人間を殺せることであろう。
④ 殺人をするなら有効な武器は他にいくらでもあること
弓矢を規制すれば、有効な武器は他にいくらでもある。槍などは日本で持てる殺傷武器でおそらく最大の殺傷力がある。登録証が必要であるが、許可まではいらないのでお金さえあれば容易に入手が可能である。
三角槍などは、△→この図形の上、右、左のいずれの角にも鋭い刃がついている。包丁などの片刃の刃物は△→この図形の上の角にしか刃がついていない。三角槍で刺されるということは、包丁で刺す場合に比べてその重量ゆえに深く刺さる上に、三方の刃でもれなく臓器や血管を傷つけるため、単純に包丁で3回深く突き刺す以上の効果が得られる。
また、ガソリンなども青葉真司の京アニ放火事件で使われたように屋内で使えば凶悪な爆発物になる。ガソリンスタンドでのガソリン販売を規制しても燃料用のホワイトガソリンを小分けにホームセンターで買えば、ガソリンスタンドでガソリンを入手するのと同じであろう。
さて、今回の事件では首や頭に矢を命中させても即死していないことから、犯人はブロードヘッドを使っていないと思われる。
ブロードヘッドとは、狩猟用の鏃のことで、鏃に剃刀のような刃が3枚ないし4枚ついているものである。
ブロードヘッドを装着しないボルト(矢)は刀で言えば峰打ちのようなものである。
体内に進入した矢は鉛筆で人の身体を突き刺したのと同じで重要な臓器や血管を避けるように進むので、致命傷を与えられない。もちろん、刃がないので臓器を傷つけにくい。
この事件の犯人である野津容疑者は「自分の持っていたクロスボーガンで矢を撃ったことに間違いない」と供述しているようであるが、クロスボウをモンスターハンターの武器のような呼び方で呼んでいること、ブロードヘッドを用いていないことから、クロスボウに興味がないのであろう。
クロスボウに全く興味がない犯人がたまたま凶器として選択したからと言ってクロスボウを規制してもあまり意味がないだろう。同じような犯人は他の方法でも同じ方法でも人殺しはできるので単に殺人の手段が変わるだけで被害者が減ることはない。
さて、この手の精神疾患者が起こすような事件を防ぐためにはどうしたらいいか。
(人を殺すような人間はまともな精神状態でないことは確かなので精神疾患であると断定させていただく)
精神疾患者が予備的に危ない行動をとったときに、早期に措置入院を行い社会から隔離し、薬物療法でもロボトミー手術でもよいので、攻撃性を除去して社会に戻すべきである。
これは青葉真司についてもいえるであろう。あの事件も犯人は完全な統合失調症である。
統合失調症などの危険人物は病院に強制的に入院させ治療を行うべきなのだ。
そのための法制度を進める方が個別に道具を規制するよりも抜本的な解決になる。
銃があろうとロケットランチャーがあろうとまともな人間であれば、その武器を人間に対して使おうとは思わないのである。
私の結論としては、やはり「道具」よりそれを使う「精神疾患の人間」に問題があるの、その人間を処理するための制度の構築が急がれる。
個々の「道具」を規制することは場当たり的な対応だが、危険な「精神疾患の人間」を積極的に治療するための枠組みを構築することは抜本的な対応にあたるであろう。